JR東日本の閑散線区発表
利用の少ない線区の経営情報(2023年度分)の開示について
JR東日本は、情報開示の観点から駅別乗車人員、路線別の平均通過人員、旅客運輸収入のデータを開示してきました。これに加え、地域の方々に現状を理解してもらい、持続可能な交通体系について建設的な議論を行うために、利用の少ない線区の経営情報も2019年度分から開示しています。今回は2023年度分の経営情報が取りまとめられたため、その内容をお知らせします。
開示対象線区
2023年度実績で平均通過人員が2,000人/日未満の線区を経営情報の開示対象としています。対象は36路線、72区間で、前回の34路線62区間より増加しました。
開示内容
開示される経営情報には以下の項目が含まれます。
- 収支: 各線区の運輸収入から営業費用を引いた値
- 営業係数: 各線区の営業費用を運輸収入で割り、100をかけた値
- 収支率: 各線区の営業費用に対する運輸収入の割合を百分率で示した値
詳細
詳細な経営情報は別紙にて提供されていますが、ここでは一部の内容を説明します。
平均通過人員の算出方法:
- 各路線の年度内の旅客輸送人キロを、当該路線の年度内営業キロと年度内営業日数で割った値です。
注意点:
- 収支データは一定の前提条件のもとで算出された試算値です。
- 運輸収入、営業費用、収支の数値は切り捨て、営業係数および収支率は四捨五入されています。
- 収支データは、運輸収入や営業費用の配分等、一定の前提条件のもと算出されています。
- 収支は当該線区の鉄道事業にかかる運輸収入および営業費用のみを計上しており、本社・支社・指令所等にかかる収入および営業費用は計上していません。
例外:
- 上越線(越後湯沢~ガーラ湯沢)の収支データは開示されていません。
- 津軽線(中小国~三厩)および米坂線(今泉~小国、小国~坂町)では2022年8月の豪雨による被災以降、バス等による代行輸送を行っています。
- 陸羽西線(新庄~余目)は、2022年5月からバスによる代行輸送が行われ、運輸収入には計上されていません。
開示の意義
今回の経営情報の開示は、利用の少ない線区の現状を地域の方々に理解してもらい、持続可能な交通体系について建設的な議論を行うためのものです。データを通じて地域との連携を強化し、将来的な鉄道網の維持・改善を目指します。
この開示によって、多くの関係者が現状を正確に把握し、持続可能な交通ネットワークの構築に向けた議論が進むことが期待されます。ご利用の少ない線区における経営の実態を知ることで、地域社会と協力しながら、適切な対応策を検討することが重要です。
No. |
線名 |
区間 |
営業キロ |
2023年度収支データ |
|
|
|
|
【参考】平均通過人員 |
|
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|
(㎞) |
|
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|
営業係数 |
収支率(%) |
1987年度 |
2023年度 |
増減 |
|
|
|
|
|
|
|
(円) |
|
(人/日) |
(人/日) |
(%) |
|
|
|
|
運輸収入 |
営業費用 |
収支 |
|
|
A |
B |
(B/A-1)×100 |
|
|
|
|
(百万円) |
(百万円) |
(百万円) |
|
|
|
|
|
1 |
久留里線 |
久留里~上総亀山 |
9.6 |
1 |
237 |
△ 235 |
13,580 |
0.70% |
823 |
64 |
△92% |
2 |
津軽線 |
中小国~三厩※ |
24.4 |
2 |
369 |
△ 366 |
13,520 |
0.70% |
415 |
61 |
△85% |
3 |
陸羽東線 |
鳴子温泉~最上 |
20.7 |
3 |
443 |
△ 439 |
13,465 |
0.70% |
456 |
51 |
△89% |
4 |
花輪線 |
荒屋新町~鹿角花輪 |
32.1 |
5 |
609 |
△ 603 |
10,916 |
0.90% |
915 |
62 |
△93% |
5 |
飯山線 |
戸狩野沢温泉~津南 |
30.4 |
8 |
899 |
△ 891 |
10,316 |
1.00% |
822 |
84 |
△90% |
6 |
磐越西線 |
野沢~津川 |
30.8 |
10 |
993 |
△ 982 |
9,738 |
1.00% |
1,142 |
102 |
△91% |
7 |
水郡線 |
常陸大子~磐城塙 |
25.7 |
9 |
530 |
△ 521 |
5,452 |
1.80% |
788 |
147 |
△81% |
8 |
山田線 |
上米内~宮古 |
92.2 |
34 |
1,784 |
△ 1,749 |
5,120 |
2.00% |
720 |
71 |
△90% |
9 |
米坂線 |
小国~坂町※ |
32.4 |
7 |
347 |
△ 340 |
4,524 |
2.20% |
864 |
86 |
△90% |
10 |
米坂線 |
今泉~小国※ |
35.3 |
11 |
493 |
△ 481 |
4,312 |
2.30% |
833 |
136 |
△84% |
11 |
気仙沼線 |
前谷地~柳津 |
17.5 |
7 |
287 |
△ 280 |
4,080 |
2.50% |
1,357 |
199 |
△85% |
12 |
北上線 |
ほっとゆだ~横手 |
25.9 |
14 |
567 |
△ 553 |
3,986 |
2.50% |
813 |
101 |
△88% |
13 |
只見線 |
只見~小出 |
46.8 |
24 |
925 |
△ 900 |
3,732 |
2.70% |
369 |
121 |
△67% |
14 |
大糸線 |
白馬~南小谷 |
10.4 |
10 |
363 |
△ 352 |
3,490 |
2.90% |
1,719 |
189 |
△89% |
JR久留里線の検討会議が発表した報告書によると、久留里線の久留里駅から上総亀山駅までの区間について、鉄道やバスなどの交通手段が利用者の移動需要に適していないとされています。そのため、車中心の交通体系への移行が提案されています。
主なポイント
- 交通体系の変更: 鉄道やバスの利用者の移動需要に適していないため、車中心の交通体系への移行が提案されています。
- バスとデマンドタクシー: 通勤通学や観光客の多い休日の移動需要にはバスを中心とした定時定路線型の交通手段が適しているとされています。また、買い物や通院などの散発的な需要にはデマンドタクシー「きみぴょん号」が適しているとされています。
- 住民の意見: 住民の代表からは、代替交通となる場合は線路などの跡地活用も含めてJRの公共交通の責任を果たしてほしいとの意見が出されました。
- 運転本数の問題: 久留里駅から上総亀山駅までの区間は日中に5時間以上運行がない時間帯があり、運転本数が少ないことが問題視されています。
この報告書は、鉄道廃線を結論づけるものではなく、今後の参考となるものであるとされています。JR東日本は、この報告書をもとに同区間にふさわしい交通体系の検討を進め、交通事業者や地域の関係者でつくる法定協議会で存廃を含むあり方を決定する予定です。
津軽線の存廃問題について
背景
2022年8月の大雨により、津軽線の新中小国信号場 - 三厩駅間で路盤が流出するなどの甚大な被害が発生しました。このため、蟹田駅 - 三厩駅間の旅客列車の運休が続いています。JR東日本は、同区間の復旧に4か月以上かかり、費用は6億円以上と試算しています。輸送実績も低迷しており、「鉄道の特性である大量輸送のメリットを発揮することが困難」として、地元自治体に対し廃止も含めた協議が行われました。
協議と決定
外ヶ浜町は鉄道復旧に拘らない姿勢を示した一方、今別町は鉄道での復旧を主張し、意見が対立していました。しかし、2024年5月23日に行われた沿線首長級会議で、今別町の阿部義治町長が鉄道復旧を断念することを表明しました。これにより、蟹田駅 - 三厩駅間の鉄道の廃止、バスやタクシーなどの転換を前提とした新たな交通体系の導入が具体的に議論されることとなりました。廃止時期は未定です。
代行輸送
蟹田駅 - 三厩駅間では、2022年8月22日から代行バスおよび乗合タクシー「わんタク」が運行されています。代行バスは平日4往復・土休日3往復、中型バスが蟹田駅 - 三厩体育館間を運行しています。「わんタク」は日中帯に運行されるデマンドタクシーであり、2024年4月1日からは「わんタク定時便」(1日4往復)と「わんタクフリー便」に再編されました。
代行バス・わんタクの利用
- 青春18きっぷを利用する場合、蟹田駅から代行バスまたは「わんタク」を利用して津軽二股駅まで移動し、その後隣接する奥津軽いまべつ駅から新幹線を利用します。
- 「わんタク定時便」は蟹田駅 - 龍飛崎灯台間で運行され、途中津軽二股駅(奥津軽いまべつ駅)で5分間のトイレ休憩があります。
- 代行バスと「わんタク」の停留所は、中小国駅発着(「わんタク」のみ停車)、津軽浜名駅発着、三厩駅発着の乗車券・定期券で乗降車が可能です。
蟹田~中小国間の未来
中小国駅が廃止されると、蟹田駅が津軽線と海峡線の会社境界駅となり、施設境界までの距離が長くなる見通しです。現在旅客営業列車が走っていないため、蟹田駅が終点になる可能性があります。
津軽線の存廃問題は、地域交通のあり方を見直す契機となり、新たな交通体系の導入が進むことが期待されます。地元自治体や地域住民との協議を通じて、持続可能な交通システムの構築が求められています。
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