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9月, 2025の投稿を表示しています

JR東日本値上げで浮き彫りになる首都圏私鉄との格差、しかし全国的にはJR優位/JR East Fare Hike Highlights the Gap with Tokyo’s Private Railways, but Nationwide JR Remains Cheaper

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JR 東日本値上げで浮き彫りになる首都圏私鉄との格差、しかし全国的には JR 優位 高尾~渋谷で 500 円超の差 JR 東日本は 2026 年 3 月から平均 7.1% の運賃値上げを実施します。これにより、中央線の高尾~渋谷間は 910 円 に上昇。一方で京王線は同区間を 410 円 に据え置くため、差額は 500 円超 に広がります。 所要時間は中央線が約 40 分、京王線が約 50 分と JR が優位ですが、運賃差の大きさから利用者の路線選択に影響が出る可能性があります。定期券でも差は顕著で、 1 か月定期で JR : 24,510 円/京王: 15,310 円 、 6 か月定期では JR : 130,350 円/京王: 82,680 円 と大きな開きがあります。 全国的に見ると「 JR の方が安い」ケースが多い 首都圏では「 JR が高い」と言われがちですが、全国的に見るとむしろ逆で、 JR の方が安いケースが基本的に多いのが実態です。 JR は国鉄時代からの全国統一的な「幹線運賃」体系を維持しており、地方路線でも比較的低廉。 私鉄は地域ごとに独立した運賃体系を持ち、地方や中小私鉄では JR より高いことが多い。 2024 年時点のデータでは、 10 ~ 30km 程度の距離で比較すると JR が安い割合は 70 ~ 80% 程度 と推定されます。 代表的な比較例(大人普通運賃) 距離 JR 標準 私鉄例(安い) 私鉄例(高い) JR が安い割合 10km 200 円 名鉄 330 円 秩父鉄道 450 円 約 80% 20km 330 円 近鉄 490 円 一畑電車 690 円 約 75% 30km 510 円 阪急 390 円 琴電 710 円 約 70% 地方私鉄では JR が圧倒的に安く、特に...

富山地鉄と自社完結の線路保守の限界 ― 廃線は既定路線か/The Limits of Toyama Chihō Railway’s Self-Sufficient Track Maintenance — Is Closure the Inevitable Course?

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富山地鉄と自社完結の線路保守の限界 ― 廃線は既定路線か 富山地方鉄道(富山地鉄)は、北陸地方に広がる約 100km の路線網を持つ地方私鉄です。しかし近年は老朽化や保守体制の限界が顕在化し、存廃問題が現実味を帯びています。かつては JR 西日本の検測車両が入線し、一定の技術支援を受けていた時期もありましたが、現在は自社完結の簡易検測と目視に依存しており、路線維持の持続可能性に大きな疑問符がついています。こうした状況から「廃線は既定路線」との見方が強まっているのです。 富山地鉄と検測車の関係史 マヤ 34 形の時代 富山地鉄は自社で専用の検測車を保有していなかったため、 JR 西日本からマヤ 34 形(客車タイプの軌道検測車)を借り入れて検測を実施していました。 2006 年9 月25 日には「マヤ34-2005 」が入線。14770 形電車に挟まれる形で編成を組み、夜間に本線・立山線・上滝線などを走行して検測 を行いました。 キヤ 141 系の登場 マヤ 34 は牽引機関車が必要で効率面に課題がありました。 2006 年に登場したキヤ 141 系(気動車方式の総合検測車)は、自走可能で電化・非電化を問わず入線できるため、より効率的な検測が可能となりました。 2007 年10 月10 日〜11 日、キヤ141-2 +キクヤ141-2 が富山地鉄に初入線 。 本線・立山線・不二越線・上滝線の全線で入線試験と軌道検測を実施。 軌間・高低・通り・レール摩耗、さらには信号通信設備まで総合的に測定。 データは JR 西日本を通じて富山地鉄の保守計画に活用されました。 意義とその後 マヤ 34 からキヤ 141 への移行は、客車タイプから自走式検測車への世代交代を象徴する出来事でした。 富山地鉄にとっては、 JR 西日本の最新検測技術を直接導入できる貴重な機会であり、保守水準向上に寄与しました。 しかし、確認できる入線は 2007 年が最後。その後は JR 西日本本線系統での検測が中心となり、地鉄線での定期的な入線は行われていません。 入線が途絶えた背景と要因 北陸本線(第三セクターのあいの風とやま鉄道へ転換)の富山駅が高架化された際、かつて存在した渡り線は撤去さ...

東海道新幹線が自動運転化を視野に進める為にTASC導入/Tokaido Shinkansen: TASC Introduction as the First Step Towards Automation

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東海道新幹線が自動運転化を視野に進める為にTASC 導入 東海道新幹線は段階的に自動化を進めており、まず第一段階として駅での停車操作を高精度に自動化する TASC を導入します。 TASC 導入後はさらに ATO 相当の自動運転機能へ段階的に拡張する計画です。 自動運転技術は報道向け公開や実証が既に行われており、実用化は時間の問題 と見られています。併せて、 米原– 京都間での360km/h 営業運転の可能性も示唆 されており、自動化と高速化を同時に進めることで運行条件や設備、車両仕様の見直しが求められる局面にあります。 TASC 導入について TASC 定位置停止制御 は駅停車の精密化に特化したシステムです。列車の減速とブレーキ制御を最適化して所定停止位置へ高精度で停止させます。導入予定は 2026 年秋で東海道新幹線の全駅と全営業列車への展開が想定されています。これにより運転士による微細な停止操作は不要となり、停車動作のばらつきが大幅に低減します。 ATO と ATC と TASC の役割分担 ATC ( Automatic Train Control ) 自動列車制御装置 安全速度管理と列車間隔の維持を担う基盤システムです。速度上限や制限を与えて追突や速度超過を防ぎます。新幹線では既に ATC が安全基盤になっています。 ATO (  Automatic Train Operation ) 自動列車運転装置 ATC の安全制約の下で加速、減速、停車、発車などの運転操作を自動で実行するシステムです。 ATO は自動化のグレードで分類され、 GOA2 は運転士が乗務して監視する自動運転レベルを指します。 TASC ( Train Automatic Stop-position Control ) 定位置停止制御 駅停車に特化した停止機能です。 ATO の停車機能の一部あるいは前段として位置づけられ、まず停車精度を高めることでダイヤ安定とホーム設備の最適化を図り、 ATO 導入への橋渡しを行います。 導入順序とタイムライン 既存基盤は ATC で安全管理が担われている。 2026 年秋 TASC 導入 停車操作の自動化と精密化を先行して実現するフェーズ。 2028 年頃 GOA2 相当の AT...

北海道で進行する「公共交通の二重の廃止」鉄路に続き、代替バスまでもが消える現実/The "Double Abandonment" of Public Transport in Hokkaido Rail Lines Fade, and Replacement Buses Follow

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北海道で進行する「公共交通の二重の廃止」鉄路に続き、代替バスまでもが消える現実 北海道において、かつて鉄道が廃止された区間で、その 代替として運行されてきたバス路線までもが相次いで廃止に追い込まれる 深刻な事態が進行しています。これは「 2 度目の廃止 」とも呼ばれ、広大な大地に暮らす人々の生活基盤である公共交通の崩壊を意味しかねない危機的状況です。 本記事では、この問題の背景と具体的な事例、そしてこの状況に対する住民の切実な声や政策批判をまとめます。 「 2 度目の廃止」の現状と主要な事例 JR 北海道の不採算路線廃止に伴って導入された代替バスは、現在、乗客の減少、深刻な運転手不足、そして自治体の財政負担増大という「三重苦」に直面し、維持が極めて困難になっています。 2023 年 10 月には、複数の路線で大幅な廃止・減便が一気に実施されました。 主な廃止・廃止予定の事例は以下の通りです(情報は 2025 年 9 月現在) 元の鉄道路線 代替バス路線(廃止された / 予定区間) 運行事業者 廃止時期 詳細 / 主な理由 天北線 音威子府〜中頓別間 宗谷バス 2023 年 10 月 旧天北線の代替バスルートが全て消滅 。乗客減少と運転手不足。 天北線 猿払〜浜頓別間 宗谷バス 2025 年予定(廃止決定) 乗客ほぼ 0 人 で廃止へ。日本最北端の長距離路線の一つ。 札沼線 新十津川〜碧水間(滝川北竜線) 北海道中央バス 2022 年 3 月 JR 札沼線末端区間転換バス。乗客減少と運転手不足で廃止。 札沼線 新十津川町内〜浦臼駅 北海道中央バス 2022 年 9 月 JR 札沼線転換バス。 「 2 度目の廃止」として大きく報道 された事例。 標津...